モータ音のサンプリング

公開

BVE用のモータ音の波形サンプルファイル(一般にMotor*.wav)の作成法を紹介します。例として、京急1500形のVVVF制御改造車(三菱)のモータ音を使用します。

サンプル音声(京急1500形VVVF改造車の一区間走行音)

>>Download wav file (kq1500vm_origin.wav)

モータ音の切り出し

 まず、収録した走行音からモータ音の切り出しを行います。ループ再生したときに違和感が少なくなるよう、できるだけ雑音が少ない部分を選びます。サンプル音声は後でFFTデータ加工を行うことを前提に、雑音の有無をあまり考えて切り出しを行っていませんが……

サンプル音声(走行音から切り出しただけのモータ音サウンドファイル)

>>Download wav file (kq1500vm_1.wav)

 Audacityで編集する場合、「ラベルトラック」を使用して切り出す部分の管理をまとめて行うと、「複数ファイルの書き出し」で一気に音声を切り出すことができ、また音声切り出し箇所の管理と把握が楽になります。

Audacityのラベルトラック使用例

ピッチ調整

基礎編

ピッチエンベロープ設定画面

 Wavepaseriのメニューから「効果→ピッチエンベロープ」機能を選択し、モータ音の音程を一定にします。調整後、音声の冒頭と末尾のわずかな部分を残して削除して再生したり、データを末尾に反転コピペして再生したりして音程が平らになったか念入りにチェックします。Wavepaseriの場合はやり直しが一回しかできないので、これらの操作は新しいウィンドウを作成し、そこに音声データをコピぺしてから試すとよいでしょう。なお、Wavepaseriで「新しいウィンドウ」を開くとフォーマットが必ずモノラル・16bit・22500Hzになりますので、必要に応じてフォーマットを変えます(ステレオ・16bit・44100Hzが普通でしょう)。

 音程が一定になったか確認する別の手法として、音声をいったん末尾に反転コピペしてから保存し、WaveMasterに読み込ませて視覚的に確認するというのもあります。高い精度で音程を一定にしたい場合はこちらの方法をお勧めします。

悪い例
悪い例

良い例
良い例

サンプル音声(ピッチ調整と反転コピペを行ったモータ音サウンドファイル)

>>Download wav file (kq1500vm_2.wav)

応用編

 モータ音が一定の加減速度で鳴ると仮定した場合、厳密に音程を一定にしたい場合はピッチエンベロープの編集画面のピッチ変化線は直線ではなく曲線を引く必要があります。ただし、実際にはWavePaseriで曲線のピッチ変化線を引くことはできません。 

 下のグラフのように、ピッチ変化線が直線一本だけでは曲線との乖離が大きくなってしまい、比率で見たピッチ変化の大きい低速域では特に問題になります。

ピッチ調整曲線

 そこで、ピッチ変化線の途中に分割点を設けて理想的な曲線との乖離を小さくすることで、モータ音の音程もより一定に近づけることができます。

ピッチ調整曲線

 以下では、加速時のモータ音を模擬したサンプル音声を利用した編集例を交えつつ、実際の編集法を紹介します。

サンプル音声(国鉄近郊型車両の加速時モータ音の模擬サウンド)

>>Download wav file (mt54sound.wav)

両端の音程を揃える

 まず、通常のピッチエンベロープ編集と同様に斜めのピッチ変化線を引きます。ただし、ピッチを上げる部分の変化は大きめ、下げる部分は小さめと非対称にするようにします。

 WaveMasterを使い音程の変化を視覚的に確認しながら、両端の音程が揃うまで(両端の周波数ピークが一直線上に並ぶまで)ピッチエンベロープ編集とやり直しを繰り返します。もともとの音程変化が大きい場合、周波数ピークの形は明らかにわかる弓形を描きます(音程が一定にならない)。

WavePaseriの設定例

ピッチエンベロープの設定

ピッチエンベロープ適用後のFFT像

ピッチエンベロープ適用後のFFT像

編集後のサウンドサンプル

>>Download wav file (mt54sound-pitchenvelope.wav)

分割点を作成

 ピッチエンベロープの編集画面に戻り、ピッチ変化線を中央付近でドラッグして分割点を作成します。今度はWaveMaster上でモータ音の両端と三つの周波数ピークが一直線上に並ぶまで、分割点の位置を微調整しながらピッチエンベロープ編集とやり直しを繰り返します。

WavePaseriの設定例

ピッチエンベロープの設定

ピッチエンベロープ適用後のFFT像

ピッチエンベロープ適用後のFFT像

編集後のサウンドサンプル

>>Download wav file (mt54sound-pitchenvelope2.wav)

必要に応じて音声加工(オプション)

※ この工程は必ずしも行う必要はありません

 WaveMasterによるVVVF車のモーター音成分分離などの音声加工を行う場合は、必ず最後の切り出し工程の前にすませておきます。例えばWaveMasterでは、音声ファイルの最初と最後のわずかな部分だけ加工がかからないという仕様があるためです。WaveMasterの詳しい使い方につきましては、WaveMasterの使い方をご覧ください。

サンプル音声のWaveMasterでの加工後
サンプル音声のWaveMasterでの加工後

 なお、今までの図を見てもお分かりいただけると思いますが、WaveMasterの周波数の目盛りの傍らに表示されている数値は必ずしも正確でない場合があります。あくまでも目安として利用しましょう。

サンプル音声(WaveMasterによる加工後のモータ音サウンドファイル)

>>Download wav file (kq1500vm_3.wav)

雑音排除と仕上げ

 ループ再生しても自然に聞こえるようなモーター音サンプルに仕上げるべく、さらに音声ファイルを切り出していきます。サウンド長は長めにしたほうが違和感が少なくなりやすい傾向にありますが、必ずしもそうなるとは限らず、この辺は慣れも必要になります(目安としてループ前の段階で0.5-2秒程度)。

 最後に、ループ再生させても違和感の内容に音声の両端を処理します。処理方法としては、単に波形を切り取るだけの他、クロスフェードで接続するという手もあります。

波形の切り出しで処理

 音声波形を反転コピペしたときに波形が自然につながるような場所を探して端部を削除します。下の例では、波形の山でつながるように端部を切り出しています。

音のつなぎ目でプチプチ音が鳴らない編集例
ループ再生可能にしたモータ音サウンドデータ

サンプル音声(ループ再生可能としたモータ音サウンドファイル)

>>Download wav file (kq1500vm_4.wav)

クロスフェードで処理

 波形の切り出しだけでループ再生が綺麗にならない場合、音声のクロスフェードによる滑らかな接続を試みます。クロスフェードは、「プチッ」などのごく短い雑音が含まれる部分を削除した前後の波形データを違和感なく接続する上でも有用です。以下ではAudacityを用いた編集例を紹介します。

 まず、音声トラックを複製し、「前後を反転」させ、少しだけ波形が重なり合うように波形を移動させます。このとき、上下のトラックでなるべく波形の形状が一致するような位置に重なり位置を設定するとクロスフェード時に音声が減衰しにくくなり、スムーズな接続の成功率が高まります。

Audacityにおけるクロスフェード編集

 波形が重なった部分を選択し、「エフェクト」→「フェードアウト」「フェードイン」を適用してクロスフェード接続を行います。クロスフェードを行った部分は波形が打ち消しあって音量が小さくなる傾向があるため、スムーズに接続できなかった場合は最初の波形の重ねを再調整してクロスフェードをやり直すか、クロスフェード編集後そのまま波形の重なり量を増やすことなどを試してみます。

Audacityにおけるクロスフェード編集

モータ音データの制作例

>>Download (2014-01-27 公開, 4.59 MiB/4,822,602bytes)

 上で紹介した京急1500形VVVF改造車の一区間走行音から、一通り走行できる程度のモータ音データへと加工したものです。モータ音データ制作の参考にしてみてください。

 なお、音声素材公開ページにも同じファイルが置いてあります。